月刊ほんコラム 私の論点:図書館をとおして

コラム

 

利用を伸ばす

 

 「組織をどのように活性化させ、実績を向上させるか」と悩む方は多い。今、日本の公立図書館では、地域ビジネスを支援するサービスが始めっており、図書館には様々なビジネスを支援するための本がある。「経営」とか「マネージメント」いう言葉がタイトルに含まれる本が秋田県立図書館には6千冊ある。しかし、社会の現実は厳しく、仮にこのような本をすべて読んでも実績が向上する保証はない。秋田県立図書館は、平成5年11月に新館オープンし、今年で20年経つ。平成6年度の入館者数は33万人、レファレンス質問件数が1,563件から平成25年度は同数が45万人、26,582件と伸びている。近年は他県の視察が多く、多く質問されるのが「なぜ利用が増えたのか」ということだ。もちろん利用を増やす魔法の杖はなく、毎年新しいサービスを取り入れ、数%の増加を繰り返してきたことによる。ただしその中で、いつも心がけていることがある。一つは現状の否定である。仕事に慣れることは悪いことではないが、同時に見えなくなることがある。新しいアイデアやサービスを創出するためには、常に現在の状況がこれでいいのかといったん否定して見つめ直してみることが必要だ。毎日そのように考えていると、自然に優れたアイデアが生まれてくる。二つ目はできるだけたくさんの視点を持ち、対象セグメントを小さくすることである。図書館では子どもから大人まで仕事や価値観の違う方々が訪れる。小学生でも、読書好きもいればスポーツが大好きと幅広い。例えば小学校5年生のゲーム好きな男の子に図書館を使ってもらうためにはどんな本を、どのように配置したらいいのかと考え改善すると利用が増える。小さなことでも、積み重ねることにより大きな実績となってくる。これらのことはマーケティングの基本であるので、どのような組織でも応用が可能であるだろう。一度、自分の仕事の中で使って見てどうだろうか。

 

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(河北新報「微風旋風」2014.1月~6月掲載)

 

山崎 博樹 (やまざき ひろき)

電子書籍図書館推進協議会代表。秋田県立図書館副館長。
秋田大学教育文化学部非常勤講師、日本図書館協会代議員・認定司書、ビジネス支援図書館推進協議会副理事長、総務省地域情報化アドバイザー。
著書として『図書館と電子書籍-ハイブリッド図書館へ』(教育出版センター)。