月刊ほんコラム 私の論点:図書館をとおして

コラム

 

街歩き

 

 最近、東北の街を訪ねるとシャッターが閉まっている商店街を見かけることが多くなった。

 そんな街を歩くとなぜそうなってしまったのか考えさせられてしまう。ドーナツ化現象や中心市街地活性化の必要性が叫ばれるようにもなった。数十年前はどうであったのかだろうか。もっと多くの人が街を歩いていたような気がする。改めて昔と何が変わったと考えるとそれは人々が車で移動するようになったことに気づかされた。私は仕事の関係で京都府に2年間住んでいたが、いつも休日になると、たくさんの人がリュックサックを背負って電車に乗っている光景を見かけた。少し注意してみると、その人達はみな小さなマップを持っている。このマップには、京都や奈良の各駅を中心とした地域めぐりが紹介されているのだ。すべての街にたくさんの史跡が残っているわけではない。しかし、一見なにもないような所でも、歴史を遡ると出来事があったり、文学作品の背景となっていたりと、街にはロマンが秘められている。秋田に戻って、県立図書館分館のあきた文学資料館で地域の文学マップ「あきた文学散歩」を作成した。「過去にはどのような文人が住んでいたのか」、「作品で紹介された風景は」と図書館資料を基に探していくと多くのことがわかってきた。普段は気づかなかった街の中に、いくつかの歌碑があることもわかった。このような資産はどこの街でもあると思う。ヨーロッパを訪れると街の中心には広場があり、市場があり、そこに人々は電車、自転車、徒歩等で集まってくる。移動するスピードを小さくすると多くのことに気づきくことができる。立派な文化施設を作ることも時には必要ではあるが、そこに人がつながりや文化を守る仕組みがないと継続的な地域の活性化は難しい。一度、車を降りて皆さんの住んでいる街をゆっくりと歩いてみたらどうだろうか。見慣れた街の中に、何かあたらしい出会いを発見することができるかしれない。

 

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