LoY2020授賞理由

優秀賞 2020


安城市中心市街地拠点施設アンフォーレ及び中核施設安城市図書情報館

授賞理由

 当該館は2017年に図書館を中核とした複合施設として開館した。旧館も評価の高いサービスを展開していたが,新館では過去の蓄積を踏まえ,さらに洗練・高度化したサービスを展開している。例えばNDC排列に加え司書らが考え抜いた独自分類を併用し,わかりやすい書架構成を提供している。職員はICT機器を活用した貸出業務等の省力化及びインカムによる情報集約を行い,レファレンスサービス等の迅速化・高度化に努めている。また,学校図書館との連携による児童サービスの充実化のほか,Fab機能・ビジネス支援機能・子育て支援機能・健康支援サービス機能の実装も特徴である。1Fフロア及び広場は近隣商店やハンドメイド作家等へ販売拠点として提供し,住民交流による触発を図っている。海外図書館を複数回視察するなど,図書館に対して深い知見と期待を持つ現市長のリーダーシップのもと,関係者が一丸となって開館準備に臨み,直営で運営に取り組んでいる。伝統的な図書館機能を安定して提供しつつ,高度化する知の拠点としての機能をもブーストさせたといえよう。

生駒市図書館

授賞理由

 生駒市では市民協働による「ビブリオバトル」の全国大会を開催し,本によるコミュニケーションを活発化するとともに,図書館ワークショップから生まれた夜の図書館イベントを市民主導で開催,「茶せんのまちいこま」ならではの茶道とアクティブラーニングをつなげた取り組みや,図書館を活かした女性の創業支援,認知症にやさしい図書館プロジェクトなど,さまざまなプログラムに挑戦している。さらに,学校給食センターとの連携で,本の中に出てくる料理を給食の献立として子どもたちに提供する図書給食プログラムをコーディネートするなど,ユニークな活動を展開している。市長の小紫雅史氏は,「生駒市のまちづくりのために欠かせないピースが直営の図書館にはある」として,図書館をまちづくりの拠点と位置付けている。生駒市役所全体が,脱公務員化を図るさまざまな活動を展開しており,その中で図書館が中心的な役割を果たしている点を高く評価した。

みんなで翻刻

授賞理由

 「多数の人々が協力して史料の翻刻に参加することで,歴史資料の解読を一挙に推し進めようというプロジェクト」という説明に言い尽くされているのが,この取り組みである。だが,本賞の観点から言えば,1)既存の史資料の活用,2)最新技術の導入,3)参加者のリテラシー向上,4)資料デジタル化の推進,5)新しい知識・情報の創造という図書館・ライブラリーが果たす役割を実現している点を高く評価する。一連の取り組みにおいて,史資料を保有する複数のMLAK機関との連携がすでに並行して進められていることも素晴らしく,MLAK機関にとっての本サービスの重要性を示している。多くの図書館等が古文書を読める世代を失いつつあり,その結果として史資料を死蔵しかねない状況にあって,「みんなで翻刻」の存在意義は計り知れない。文化機関の伝統的な役割を技術がアップデートしていく取り組みとして,ますます発展させていく必要がある取り組みである。

須賀川市民交流センターtette

授賞理由

 東日本大震災からの創造的復興を目指し,施設のコンセプトに「人を結び,まちをつなぎ,情報を発信する場の創造」を掲げ,図書館を核として,生涯学習機能や子育て支援機能,市民活動支援機能,賑わい機能などを併せ持つ集客力の高い融合施設として整備している点を高く評価した。また,複合施設でありながら,各機能が緩やかにつながる開かれた空間を創出し,図書館エリア以外の交流スペースなどの各機能エリアにも図書を配架する全館配架や,市民の活動に合わせたテーマ配架などに挑戦するとともに,多機能施設のメリットを生かした機能連携を図った事業を展開するなど,市民交流の拠点として,滞在型・交流型図書館づくりを推進している。さらに,設計段階から35回の市民ワークショップを行い,中学生から高齢者まで延べ700人以上の市民が参加し,それらの意見を取り入れているとともに,オープン後も設計者やコンサルタントが関わるアドバイザー制度を設け,民間の意見を取り入れる仕組みを構築している点も併せて評価した。

ライブラリアンシップ賞2020


北海道ブックシェアリング

授賞理由

 北海道は,その地理的条件や厳しい経済・財政状況から,図書館設置率,学校図書館の予算措置率,無書店自治体数などがいずれも全国ワーストレベルにあるが,北海道ブックシェアリングは,その読書環境を少しでも改善するべく活動してきた一般社団法人である。2018年の胆振東部地震では,被災地にいち早く入り,図書館復興の先頭に立ったこと,書店のない地域に行ってブックフェスティバルを開催し,過疎の町の知的ニーズに応えてきたこと,また今年春には学校図書館サポートセンターを開設し,自治体の学校図書館づくりの本格的支援に乗り出したことなど,数々の地域の課題に向き合い,真摯に地道で戦略的な努力を重ねてきたことを評価した。

saveMLAK

授賞理由

 2012年の優秀賞に続く2度目の授賞となるが,ライブラリアンシップ賞にふさわしい活動を10年近くにわたって継続してきている点を評価する。特に今回は,1)COVID-19を受けての公共図書館,大学図書館,専門図書館等の休閉館状況の悉皆調査を継続的に実施している点,2)2011年の東日本大震災を受けての発足時に比べて担い手がより一層拡張している点,3)呼びかけ「災害への『しなやかな強さ』を持つMLAK機関をつくる」を発出する等,アドボカシーに注力している点を評価する。これらの活動はsaveMLAKだけの活動に留まらず,大手紙の社説でsaveMLAKの調査や呼びかけに基づく論説が展開される等,図書館等の文化機関のアドボカシーに大きく貢献している。なお,この10年にわたって,補助金や助成金に依存することなく,寄付と物販によって自主財源を確保して自立性の高い活動を継続している点も特筆しておきたい。

特別賞2020


新潟市学校図書館支援センター

授賞理由

 新潟市教育委員会では「新潟市教育ビジョン」及び「新潟市子ども読書活動推進計画」に基づき,教育委員会内の各課が連携して学校図書館の利活用を推進している。なかでも新潟市学校図書館支援センターは,市立図書館からの団体貸出に加え,学校司書向けの研修,各学校図書館への訪問,実務マニュアルの作成,各種情報の提供など,多様なメニューでサポートしている。本来どの自治体でもすべきさまざまな施策を,長年にわたり,徹底して実施している点を高く評価した。


最終選考会開催について

最終選考会は図書館総合展セミナーとして11月5日(木)午後1時から午後2時40分にオンライン配信により行います。

2020年9月30日

IRI事務局