Library of the Year 2018 優秀賞・ライブラリアンシップ賞決定&授賞理由について

LoY2018選考委員および外部推薦で寄せられた29施設・団体・サービスの中から第1次選考会、第2次選考会を経て、次の4機関がLoY2018優秀賞、1機関がライブラリアンシップ賞を受賞しました。

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LoY2018優秀賞

従来の図書館イメージを覆す図書館サービスを提供し、これからの図書館のあり方を示唆するような先進的な活動を行っている機関を評価するものです。
(以下、順不同)

LoY2018優秀賞:「当たり前」の実践としての「ぶどうとワイン」という地域資源の開拓と活用

受賞機関:甲州市立勝沼図書館

授賞理由詳細

 開館以来20年以上、「当たり前」のこととして、地域の歴史・文化・産業、つまりは「生活」そのものである「ぶどうとワイン」に関する資料収集に始まり(現在日本屈指の3万点)、地域資源としての「ぶどうとワイン」に焦点をあてた地域研究を一貫して実践してきている。
土壌の研究や日本にワイン醸造をもたらした勝沼の先人たちの足跡調査や資料調査等、地域における自主的な「まなび」の実践に基づく「ぶどうとワインの資料展」を毎年実施している点、いうなればその地域だからこその知識の醸成に資している点を評価した。
一連の取り組みは課題解決支援や農業支援という言葉が登場する以前から、当地における「当たり前」の実践としてなされていることも申し添えておきたい。

LoY2018優秀賞:活用を重視した「記憶を育てるアーカイブ」がアーカイブ・図書館の本質を問う

受賞機関:3.11オモイデアーカイブ

授賞理由詳細

 東日本大震災後の市民による地域アーカイブ活動。津波被災で失われた仙台沿岸地域のくらしの記録を、市民自らが“アーキビスト”となり“ユーザー”となって発掘し、人びとの記憶を引出し、共有し、育んでいる。このため、地域の人びとにとっては「ジブンゴト」であり、訪れる人にとっては自らのコミュニティの意味を省みさせるかかわりしろがあり、後に発災した熊本地震の地域アーカイブ活動にもつながった。
 記録の「活用」を重視することで、単にデジタル化した記録を蓄積公開することにとどまるのでなく、地域の知や価値の継承・創造的循環を可視化しているといえ、図書館やアーカイブの原点、本質を表す活動となっている。

LoY2018優秀賞:本の価値とは何かを問い、知のエコシステムの再構築を目指す

受賞機関:バリューブックス

授賞理由詳細

 コア・ビジネス(ネット古書店)の仕組みを活用し、寄付された古書を換価し団体(NPO・大学等)を支援するプロジェクトや、市場価値がなくとも有用とされる本を循環させる仕組みづくり、息の長い本を編む出版社への価値還元などを行っている。東日本大震災で被災した陸前高田市図書館の再建プロジェクトが記憶に新しい。
 古書取引に関わるビッグデータや市場価値を通して「物」としての本の価値をつきつめてみつめることで、むしろ、消費され廃棄されて行く「物」ではなく、本に化体している知の価値をとらえ、これを多様なコミュニティに還元して行く「知」のエコシステムを構築しようとする取組みであり、本来、図書館が誠実に向き合うべき課題に気づかされる。

LoY2018優秀賞:「食と農」の情報源となって「人と人」を繋ぎ、地域の未来を考えていく図書館

受賞機関:小山市立中央図書館

授賞理由詳細

 市の主要課題である「農業」に特化し、真に地域に根ざした図書館サービスの充実を目指す同館の農業支援サービス事業は、昨年10周年を迎えた。具体的には、(1)農業関係機関との連携およびネットワーク構築、(2)生産者・消費者への情報提供、(3)おやまブランドの全国発信や農業支援のPRを通して、図書館が人と人を繋ぎ、地域振興にも大きく貢献することを実証した。
 図書館HPには小山市の農産物や特産品について学べる「おやま地産地消ライブラリー」があり、海外発信の先駆けとして、地域の実情に即した日本特有のビジネス支援をアメリカ図書館協会にて紹介するなど、「積極的な情報発信」に力を入れている点は他館にない強みとして評価した。


ライブラリアンシップ賞

永年にわたって地域住民や図書館員が協同し、さまざまな図書館活動を継続的に行った図書館等を称えるための賞です。ここで言うライブラリアンとは、図書館員グループおよび地域住民の総体を示しています。長期にわたって日本を代表する優れた図書館サービスを、館種を超えた図書館や地域住民と共に行ってきたことを評価するものです。

ライブラリアンシップ賞:松任図書館・学校図書館支援センター、学校、地域住民が一体となって全国トップレベルの学校図書館活性化、見える化の実現。

受賞機関:白山市立松任図書館・学校図書館支援センター

授賞理由詳細

 白山市による学校図書館活性化施策として進めた市内28小中学校への専任学校司書の配置、定期的な正職員学校司書の採用、地域住民との協働、さらに白山市立図書館内の学校支援センターによる強力な支援は、学校図書館の利用増、授業における図書館活用に大きく貢献した。関係職員による司書部会の開催も職員の資質向上に大きく貢献している。またPTAと協力したビブリオバトルの開催、2006年から開催している調べ学習コンクールは、毎年増加し昨年度は2706点の応募があった。長年に渡り様々な機関、職種の方々が協力しながら、全国トップレベルの学校図書館活動に繋がり、子どもたちの学習能力向上に繋がっていることを高く評価した。