Library of the Year 2018 選考委員長と受賞機関のコメントを掲載いたします。

■選考委員長コメント

「LoY2018を終えて」

選考委員長 山崎博樹

今回で13回目となったLoY2018は、10月30日開催された最終選考会をもって終了しました。日本の図書館等が進むべきいくつか道を示してくれた受賞5機関に、賛辞を贈ります。

今年度も4月の当会の理事会で選考委員長が決定し、選考委員長が選考委員を選出することからスタートしましたが、定例理事会では選考の効率化、審査員の選出等で長時間の討議を行われ、そのことを踏まえて事業を行うこととなりました。

今年度の選考委員は、昨年に比べて4名減で11名となりましたが、新規に2名の選考委員を加え、公立図書館、学校図書館、専門図書館、大学図書館、図書館外関係者とバランスと役割を考えて構成しました。協賛企業は、賛助金、大賞・ライブラリアンシップ賞の景品を提供いただいた富士通システムズアプリケーション&サポート、キハラ株式会社、木製トロフィーを提供いただいた内田洋行株式会社の3企業に協力をいただけました。さらに全国のみなさまの協力によるクラウドファンディングもおかげさまで目標額を達成いたしました。協力していただいた皆様に感謝申し上げます。

今年度の一次選考は、29機関が推薦されました。すべてが素晴らしい図書館関連サービスを実践している機関ばかりでした。今年度から一次選考は数値化して選考する方式を試みましたが、今後もいろいろと考えていく必要があると思っています。結果、二次選考には11機関が選ばれましたが、今年度も、素晴らしい図書館活動を行っている機関が選ばれたと感じます。

二次選考会は一般公開で行われていますが、毎年のことながら11機関から優秀賞対象機関を選ぶことは大変難しいことです。今年も真剣な議論が行われたと思っています。

ライブラリアンシップ賞は「白山市松任図書館・学校図書館支援センター」が決定しました。一般的に学校図書館の活動、その支援活動は外部には伝わりにくい面もあって、この白山市の取り組みも当初は選考委員の多くにとって詳しくわからない面もありました。しかし、長年にわたる学校図書館支援センターの強力な活動、学校図書館への司書配置が、子供たちや地域に大きな成果を挙げていることは明らかであり、だれもが納得できるものでした。最終的には選考委員の多くが称賛し、「白山市松任図書館・学校図書館支援センター」にライブラリアンシップ賞を差し上げる結果になりました。ライブラリアンシップ賞は、その機関の職員だけではなく、関係者を対象とした広義の意味合いを込めています。今回もその意味で極めて的を射た機関が最終的に選考されたと考えます。

優秀賞の機関を決めるため、約2時間の議論を行いました。二次選考に進んだ11機関はどの活動も非常に優れたものであったため大変な議論になりました。結果として最終選考に進めなかった機関でも十分に大賞や優秀賞の受賞価値があった機関が多かったことから、毎年、図書館関連機関のレベルが上がっていることを感じざるを得ません。

2018年10月30日、総合展特設会場に200名近い来場者を迎え、最終選考会が開催されました。一昨年度から優秀賞の機関の紹介は、その機関の担当者や関係者が行っていますが、今年度のプレゼンも効果的で、ポイントも掴んでいたと思います。

大賞の審査員は、今年度は図書館に直接関係がない方5名にお願いしました。それぞれの分野でトップランナーである方々ばかりということで、短い時間の中で的確なコメントをいただけました。図書館員より図書館員らしい発言もあった等、ある意味新鮮な感覚を来場者の方持ったのではないでしょうか。選考委員長としてもどの機関が大賞となるか今回は予想が付かず、大変激戦になることが予想されました。結果、大賞及び会場票によるオーディエンス賞を「甲州市立勝沼図書館」が受賞しました。もちろん他の機関が劣っていたわけではありません。大賞は2票で決まり、他の機関も1票ずつ入りました。会場来場者が決めるオーディエンス賞はわずか1票差と極めて僅差からもそのことがわかります。勝沼図書館の地道な取り組みでありながら、継続的に実施され、他と積極的な連携が図られたいることに審査員と来場者の共感があったのかもしれません。

優秀賞3機関のうち、企業1機関、団体1機関が選ばれたのも今年の特徴であったと思います。バリューブックスのビジネスを超えた取り組み、3.11オモイデアーカイブの熱心な活動は、図書館員から見ても大変好感が持てるものであったでしょう。また小山市立図書館の全市を挙げた農業支援サービスは大変模範となる取り組みです。

LoY2018は、候補機関推薦者、図書館総合展関係者、スポンサー企業、選考委員、最終日に今年初めて組織した最終選考会実行委員会のみなさま、IRIの担当者、クラウドファンディングで資金提供していただい方々、多くの協力があったことで事業を終えることができたと考えています。この場を借りて感謝を申し上げます。

来年度もLoY2019をぜひ開催したいと考えておりますので、この事業そのことが日本の図書館の活性化につながることを祈念し、皆様のご協力を引き続き賜れれば幸いです。

■大賞・オーディエンス賞・優秀賞受賞のコメント

「甲州市立勝沼図書館」

甲州市立勝沼図書館 一同

この度は、Library of the year 2018の大賞とオーディエンス賞を賜り、本当にありがとうございました。関係各位の皆様、そして、当日、審査を頂きました審査員の皆様と会場でプレゼンを聞いてくださった皆様にも、心より感謝申し上げます。早口の説明の中、少しでも≪勝沼≫を感じていただけたのかな、と思っています。そして、勝沼図書館設立に関わってくださった皆様、資料展の際に取材をさせていただいた皆様、これまでアドバイス・助言をくださった皆様、イベント時にお世話になった皆様、普段利用してくださっている利用者の皆様、何よりこの勝沼地域の皆様、今回の受賞は皆様のおかげだと、スタッフ一同感謝しております。この場をお借りして、御礼申し上げます。トロフィー・賞状を展示させていただいた時、利用者の「おめでとう!私もうれしいです!」に泣けてきました。

「より地域密着・専門性の高い図書館を目指して」

葡萄畑と扇状地が広がる勝沼。22年前、この勝沼図書館が設立され、当初より『地域に根差した図書館であろう』とのコンセプトのもと、根幹産業である「ぶどう・ワイン」の資料収集・提供・保存を掲げました。開館前には葡萄栽培・ワイナリーの密集地でもある土地柄から、地域住民にも眠っている古い資料の提供を呼び掛けたそうです。その一年後、現在も続く『ぶどうとワインの資料展』がスタート。実はこの資料展の裏テーマは≪地域再発見≫!地域資源≪ぶどう・ワイン≫を軸に、繋がり、広がっていく人々や地域、産業や時代のニーズ、歴史の中で先人が残した文化と次世代への継承などを意識しながら行ってきました。取材に出ると、私たちも改めて勝沼の魅力を知ることができ、伝えてきました。この短くも濃い歴史を見直すと、私は図書館スタッフの『熱』を感じるのです。そして、『つないで』いこうと!

博物館や美術館ではなく図書館で「資料展」を行う利点は、関係資料だけでなく、その時々のテーマに合った時代考証の背景資料であったり、写真集のような美術資料、土地的な地域資料も見ていただけることです。「図書館」っていろいろ繋げることができる!すごいですよね!「書」を「司る」私たちにとって、それを広く知ってもらえることも大事なことだと思います。

1つの収集テーマがあるというのは、図書館の強みだと思います。それが「地域密着」であればあるほど。今後さらに掘り下げ、より多角的目線から資料収集・ファイリングをしていき、公開できれば、と考えています。まだまだ進化していくのが勝沼図書館です。やりたいこと、やらなければならないことは山ほどありますが、≪同じ方向を向いて仕事のできる仲間≫と、この受賞を『誇り』に変えて、進んでいこうと思います。

皆様、山梨にいらした際には勝沼にぜひお寄りください!

世界のワインだけではなく、甲州ワイン、読めます。

■ライブラリアンシップ賞受賞のコメント

白山市立松任図書館・学校図書館支援センター

石川県白山市立松任図書館 館長 中村 泰広

この度は、Library of the Year 2018 ライブラリアンシップ賞の表彰を賜り、職員一同、大変、喜んでおります。ご推薦並びに選考委員の皆様方には、心より感謝申し上げます。

白山市立松任図書館並びに学校図書館支援センターは、日本三大名山である白山、県内最大の流域を誇る一級河川 手取川、また日本海など豊かな自然に恵まれた環境の中で、読書活動を推進しております。

特に、子どもの頃から読書に親しむことに重点を置き、全小中学校の図書館への学校司書の配置、学校図書館支援センターを拠点とし学校図書館と市立図書館の利用促進、県内で初めての調べ学習コンクールの開催、PTAからの要望を受けてのビブリオバトル中学生大会など、学校や地域等との連携を大切に活動してまいりました。その結果、学校図書館での児童生徒の貸出冊数は年々急激に増加していることや調べ学習コンクールの全国コンクールで最高賞などの優秀な賞を受賞するなど、子どもたちの読書活動が向上しました。

これらの活動を長く続けられたのは、歴代の館長や職員の強い思いと学校や地域等の方々のご理解とご協力によるものであります。

「継続は力なり」という言葉がありますが、今回の受賞を励みに、これからもこれらの活動を継続し学校や地域等との連携を強化するとともに、「読書は楽しく大切なもの」を伝えるために新たな活動を検討することとしております。ありがとうございました。

■優秀賞受賞のコメント

3.11オモイデアーカイブ

3.11オモイデアーカイブ 一同

この度は Library of the Year 2018 において優秀賞をいただき、ありがとうございました。

最初に申し上げておきたいことは、この賞は、私共と一緒に活動してくださっている仙台市沿岸部の皆様、活動に携わってくれている関係者の皆様、これまでツアーに参加してくれた皆様、想いをともに活動しているスタッフの全員でいただいた賞だと思っております。心からおめでとうございます!

仙台に戻り、11月16日には「ライブラリー・オブ・ザ・イヤー 2018 優秀賞受賞記念~ご報告をかねて懇親を深める会」を行い、いつもお世話になっている総勢80名以上の方と喜びを共有させていただきました。

私たちの活動は主に「3.11定点撮影プロジェクト」と「3.11オモイデツアー」の2つで、受賞の理由は『活用を重視した「記憶を育てるアーカイブ」がアーカイブ・図書館の本質を問う』でした。図書館という館・場所を持たない私たちですが、写真では残せない“記憶”にフォーカスすることで、“まちと人の記憶を引き出し、地域の知恵と知識を知り、育み、記録する”という活動を行っております。この点が評価されたことは、活用を重視したアーカイブ、市民全員がアーキビストという活動ポリシー掲げている私たちにとって、有り難く、また大変誇りに思う賞です。

「3.11オモイデアーカイブ」は、今回の受賞を励みに、2021年、東日本大震災から10年を見据えつつ、これからも活用重視のアーカイブと沿岸部のまちと人々のファンを増やす活動を地道に続けてまいります。すべて失ったように見える沿岸部ですが、ぜひ、宮城、仙台に足を運んでいただき、地元の皆さんとの交流を図りつつ、地域の宝モノ探しにご参加ください。多くの皆さんのご来仙をお待ちしております。この度のLibrary of the Year 2018 優秀賞、誠にありがとうございました。

バリューブックス

株式会社バリューブックス 従業員一同

この度の Library of the Year 2018 におきまして、本屋である私たちが優秀賞を頂けたことは大変名誉なことと受け止めております。大賞を受賞された甲州市立勝沼図書館様に祝意を表しますとともに、関係各位に感謝申し上げます。

古本買取の事業からスタートした私たちですが、様々な事業を展開していく過程で、本の素晴らしさを心から感じるようになりました。そんな私たちの活動が、全国の図書館関係者の方々に評価され、これからの図書館のあり方に、何かしらの影響を与えることができていること。とても誇りに思います。私たちが日々行うさまざまな活動は、皆様からの応援をはじめ、お客様からお送りいただく本やスタッフ全員の協力があってこそ、実現しています。本屋である私たちが選ばれた意味を受け止めながら、バリューブックスはこれからも、日本中、世界中の人たちが、本を自由に読み、学び、楽しむことのできる世界を、本を大切に思っている皆様と一緒につくっていけたらいいな、と思っています。ありがとうございました。

小山市立中央図書館

小山市立中央図書館 館長 森谷昌敏

この度は、Library of the Year 2018 において、「優秀賞」をいただき、誠にありがとうございます。関係する皆様方に心より感謝を申し上げます。

小山市では、「夢・魅力いっぱい未来へつなぐ~みんなの笑顔と元気で明日の小山創生~」を将来都市像とした第7次小山市総合計画を策定し、その中で、図書館は「豊かな人と地域を創る生涯学習」の拠点として、図書館電算システム運営事業、図書館ビジネス支援・農業支援サービス事業が主要事業として位置づけられています。

また、小山市立中央図書館は、4つの運営方針を掲げ、①生涯学習を支援する図書館 ②生活に役立つ図書館 ③市民とともに歩む図書館 ④誰もが安心して使える図書館 を目指して運営しています。

今回の受賞にあたり、ご評価いただきました「農業支援サービス事業」は、平成19年度 文部科学省委託事業「地域の図書館サービス充実支援事業」に応募、採択され、当館で既に取り組みを進めていたビジネス支援サービス事業の一環として開始しました。図書館の機能と資料を活用し、市農政課、栃木県下都賀農業振興事務所、小山農業協同組合などの関係機関と連携・タイアップし、市の重要課題である「農業」について、図書館が地域の情報源となり、地域に根ざした図書館サービスの充実と、農業の活性化および地域振興・発展に貢献することを目指して、事業を進めてまいりました。

生産者や消費者への情報提供、団塊の世代の能力活用や新規就農、グリーンツーリズムの推進、おやまブランドの創生・全国発信にも大いに役立ったものと思います。開始当初は全国のモデルケースとしても注目していただき、市民の皆様や連携を図ってくださった関係機関、応援やご協力をくださった皆様のおかげをもちまして、昨年11月に10周年の記念事業を開催することができました。また、昨年6月には、アメリカ図書館協会年次総会でのポスターセッション2017において、世界に向けた情報発信をもすることができました。

小山市立中央図書館は、今後も「市民に役立つ身近な情報発信図書館」として、誰もが気軽に無料で利用できる図書館施設と資料、課題解決のための情報探索を支援する司書の存在を、地域創生・活性化に役立てていくために、顔の見える連携を大切にしながら、地域に根ざした図書館サービスを提供してまいります。

結びに、Library of the Yearのますますの発展と、関係する皆様方のご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。この度は誠にありがとうございました。