Library of the Year 2025 授賞理由

Library of the Year 2025 ライブラリアンシップ賞

長年にわたって地域住民や図書館員が協同し、さまざまな図書館的活動を継続的に行ってきた図書館等を称えるための賞です。なお、この賞におけるライブラリアンとは、図書館員グループおよび地域住民、関係者の総体を示しています。日本を代表する優れた図書館サービス等を、館種を超えた図書館や地域住民とともに、長期にわたって行ってきた活動を評価します。 

(以下、五十音順)


松竹大谷図書館

【授賞理由】

持続可能な専門図書館の運営および資料の保存や公開への取り組み

【授賞理由の詳細】

映画、演劇、歌舞伎に関する貴重資料の保存や公開を行っている専門図書館である。2012年に資料保存や図書館運営の資金獲得を目的としたクラウドファンディング(CF)を実施し、日本の専門図書館として初めて達成するに至った。その後もCFに取り組み、電動書架の整備やデジタルアーカイブの構築を掲げて13年連続で成功させた。また、それ以外の寄付も広く募り、図書館運営の資金を安定して受けられるようになったことで、最新のCFでは資金使途の全てを資料保存の用途に振り分けられるまでになった。貴重資料を後世に伝える保存や公開の取り組みに加え、長きにわたって図書館の運営状況の改善に尽力されてきた点を高く評価したい

北摂アーカイブス

【授賞理由】

2010年から続く協働に基づく共創型デジタルアーカイブの祖

【授賞理由の詳細】

市民と行政が協働に基づく共創を実現し、15年にわたり地域のデジタルアーカイブを持続的に構築・運用してきた。この取り組みは市民参加型アーカイブの先駆的事例として後続のモデルとなり、全国に広がる活動に大きな影響を与えている。図書館は地域フォトエディターを育成し、市民の編集活動を支援することで、デジタル時代にふさわしい新しい図書館像を示した。さらに二次利用に敷居を徐々に下げる規約改正を重ね、写真の収集、デジタル化、保存に留まらず、展覧会等を通じて活用してきた。こうした市民と図書館等による持続的な実践は、協働と共創のモデルとして高く評価され、「共創」という言葉が広まる前から優れた実践を示してきた。


Library of the Year 2025 優秀賞

従来の図書館イメージを覆す図書館サービスを提供し、他の図書館等の参考となる先進的な活動を評価します。なお、この賞における図書館サービスには、図書館以外の機関が展開する「図書館的な取り組み」も含まれます。

(以下、五十音順)


オーテピア高知図書館と高知県図書館振興計画の両輪での推進

【授賞理由】

オーテピア高知図書館と高知県図書館振興計画の両輪での推進

【授賞理由の詳細】

史上例のない県・市一体型図書館を整備する中で、高知県全域を対象とした図書館振興計画を策定し、全県民の福祉向上に取り組んでいる。この取り組みにより、模範とすべき県・市一体型図書館のモデルを示した。県内では土佐市や梼原町、佐川町、四万十町、南国市など多くの自治体で整備が進み、未設置自治体への働きかけも地道に行われている。こうした挑戦に関わった県・市の現職・元職員の努力と貢献は高く評価したい。

新庄・最上地区の「地域まるごと学び場プラン」

【授賞理由】

市民発「とらいあ」による地域全体を視野に入れた戦略的事業展開

【授賞理由の詳細】

2007年、新庄市図書館の業務委託をきっかけに発足して以来、県や周辺自治体のプロジェクトに積極的に参画しながら事業範囲を拡大してきた。現在は舟形町・大蔵村・鮭川村学校図書館、山形県立新庄病院図書室、新庄・最上ジモト大学、雪の里情報館の運営など、事業拡大による収益の増加、運営の継続性、職員の雇用環境の整備を実現している。市民発の団体による地域の文化施設・組織運営のモデルの一つとして高く評価したい。

全国文化財総覧

【授賞理由】

発掘調査報告書を始めとした文化財情報のWeb上での発信と展開

【授賞理由の詳細】

灰色文献の一種とされる埋蔵文化財発掘調査報告書の電子化とWeb公開を行い、遺跡地理情報や本文の検索等を可能にした。これにより文化財情報の発信・保存・利活用の範囲は大きく広がりを見せている。もとは2008年に始まった中国地方の大学図書館による事業であり、全国展開と埋蔵文化財行政への接続を経て2015年より奈良文化財研究所が運営を担う。業種を超えた関係組織の参画のもと、今後の発展性も期待される。

箕面市立船場図書館における大学図書館と市立図書館の一体的運営による社会連携の取組み

【授賞理由】

市立図書館と大学図書館の機能を活かした市民と大学のハブ的活動

【授賞理由の詳細】

箕面市立船場図書館は大阪大学が指定管理者として運営し、市立図書館と大学図書館の一体的運営というユニークさが最大の特徴である。この特徴と機能を活かした、市民と大学、地域と世界のハブとなる活動は利用者から高い評価を得ている。大阪大学と箕面市が長年築いてきた関係を背景に密な協議を重ねている点、大学教員・学生・地域団体と連携した取組みを多数実践し年々その幅を広げている点等、その活動を高く評価する。


<報道・報告などにあたって(お願い)>

Library of the Yearは図書館の活性化を目的の一つとしています。テレビ、新聞、雑誌、ウェブなど、各種メディアに取り上げていただくことを大変嬉しく思っています。受賞された自治体等が広報に活用していただくことも歓迎・推奨しています。

ただし、本事業はその名称こそ「Library of the Year」となっておりますが、「図書館的」な機関・組織等が行なっている先進的な「活動」を選考対象とするものであり、「日本一の図書館」を選出することを目的としているわけではありません(大賞を受賞した活動に対し、主催者が「日本一」という表現を用いないのは意図的なものです)。各種メディアでこの賞の結果を話題として取り上げていただく際には、本事業が意図する以下の留意点を踏まえていただくようお願いいたします。

  • 選考・評価の対象となるのは図書館等による先進的な「活動」であり、実施主体である「機関・組織等」ではありません。
  • 本事業は全国の図書館等を総合的・客観的に評価して「日本一の図書館」を決めるものではありません(大賞受賞活動を「日本一の図書館」と位置づけるものではありません)。あくまでも「他の図書館等の参考になる活動を行っているか」という基準にもとづき、選考委員・審査委員がそれぞれの観点から評価するものです。
  • 優秀賞、ライブラリアンシップ賞および特別賞を授与するに際しては、選考委員会と実行委員会の責任のもとに「授賞理由」を言語化し、本ウェブサイトにて広く一般に公開いたします。
  • 授賞は年に一度のみですが、選考・評価についてはここ数年程度の活動を対象とします。長期的な活動はライブリラリアンシップ賞として表彰します。

<Library of the Year 2025 最終選考会の開催について>

最終選考会は図書館総合展フォーラムとして、2025年10月24日(金)13:00~17:00 パシフィコ横浜にて開催いたします。皆様ふるってご参加ください。最終選考会は会場のみでの公開となり、オンラインによる配信はございませんのでご了承ください。

なお、今年度の「Library of the Year 2025 最終選考会」は、「Library of the Year 20周年記念フォーラム」との連続開催となり、以下のスケジュールにて実施します。

●2コマ目(13:00〜14:30)

前半:2016〜2020年の選考委員長・山崎博樹と、2021〜2025年の選考委員長・岡野裕行の2名によるトークセッション(20分程度)

後半:優秀賞を受賞した4活動によるプレゼン、および審査員討論会(70分程度)

●3コマ目(15:30〜17:00)

前半:審査結果の発表、ライブラリアンシップ賞、優秀賞、オーディエンス賞、大賞の授賞式および記念スピーチ(40分程度)

後半:歴代の受賞者、審査員、選考委員、運営委員による20周年の振り返りトークセッションおよび交流会(50分程度)

※2コマ目と3コマ目の間(14:30〜15:30)に60分間の休憩が挟まります。

 

「Library of the Year 2025 最終選考会」については、図書館総合展の公式ウェブサイトでも開催情報を公開しております。

※参照URL:https://www.libraryfair.jp/forum/2025/1436

2025年9月9日

 Library of the Year 2025 実行委員会